2010/06/12

Burma VJ、カレン族、先は見えぬが叛乱は必ずある(2)

「Burma VJ(ビルマVJ 消された革命)、カレン族、先は見えぬが叛乱は必ずある」 の続き。HUちゃんのコメントを受けて、追記↓

「ヤンゴンの町を見ても日本の”援助”は全然”生かされていない”と判る。一方で、中国共産党はインド洋進出の通り道としてのビルマのインフラ整備に乗り出しててホンキっぽいよと。でも実際のところどうなっているのかよく判らない」、、、、映画トークショーにて宇田さんの報告がありました。

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少数民族(minority)/民族集団(ethnic group)に重なる話なのですが、宇田さんのカレン本の中で印象深かったのは2点。

D・タカボー「ビルマには多くの民族がいるが、たとえば、言語の違いによって民族が違うとなぜ言い切れる?西欧的な考えや価値観や人類学的な手法で我々を区別してほしくない。そうやって君たちは、自分たちの見方でカレン民族を細かく分けているが、カレンはカレンで一つなんだよ。確かに数は少ないが、我々にも我々の考え方や価値観、民族の区別の仕方があるのだよ。それを尊重してほしい。...」という言葉を受けて、宇田さん自身いまだに取材成果を発表する際に「カレン族」「カレン民族」「カレン人」、どの表記がもっともふさわしいのか迷うというのだ。

もうひとつ。

生まれ育った土地への帰還を夢見る旧世代のカレン人もいれば、タイ側の難民キャンプで生まれ育ち、ビルマに対してそれほど愛着を持っていない若い世代もいるという話。カレン人社会・カレン民族同盟は、ビルマ軍政の人権侵害・民族間の不平等政策を勿論批判するけれど、同時に、家に戻れば封建的なカレンの男女関係があり、家庭内の男女の不平等はほっとかれ、男性中心の世界であるという(そういう側面もあるということだろう)。

僕が在日朝鮮人の運動圏に長く関わる中で、常々関心があり、最も発言してきたテーマは、ヘテロでコリアンなオッサンのダメダメさであり、「日本人の皆さん協力ありがとう」という、日本人の皆さんはいつまでも協力してくれるお客さんでしかないという言い回しについてであり、在日朝鮮人圏に嫁いだ”日本人妻”の生き方についてでした。

カレンの話を聞いて、全く僕が口出しできない個別の”マイノリティ”の話があるな、と感じました。同時に、同じ土俵の上で話し合えるテーマもあると強く感じました。今後、カレン人がどう生きうるのかというテーマは、在日朝鮮人がどう生きうるのかというテーマと通じています。それは逆に、ビルマ人がどう生きうるのかと繋がるということであり、日本人がどう生きうるのかと繋がるということなんです。

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繋がってるのは繋がってるよ、あと「タフ」で無ければならないという話。

例えば「部落の解放」というテーマに関心があった者が、部落の解放の運動を主体的に担っている人々のイベントに参加してみたと。そこで非常に封建的な男女関係を目にしたよ。すると、部落問題に関心にあった気持ちまでがスーっと引いてしまい、それ以来、部落について関心が無くなったと。そういう話を何度か聞いたことがあります。

何を勝手に期待して「こうであろう」と決めつけて、勝手に身を引いてるねんと。同じ土俵で語れるテーマもそうで無いテーマもあるに決まってるやん!って話

、、、知り合いとの会話を色々思い出し、胸が熱くなりました。

僕が今、左派な保育運動の現場で過去について見聞きし調べ今の現場に繋げようとしていることも、1950年前後の在日朝鮮人運動史を思い出そうとしていることも、在日コリアンが無くなってええ共同体なんか、共同体たりうるならばどういう形でなんか、僕はその周囲でどういう人生を選択できるのか、どういう人生にしようか、どこかにロールモデルは無いのか、、、という「僕と僕の家族の話」に全て通じているんよな。そういう直感みたいなものを、このカレンの話を聞くなかで強く感じたのでした。

以上、忘れぬうちにメモっておく。

1 コメント:

HU さんのコメント...

どもども。前回のコメントに書いた大阪の先生は、大阪外大じゃなくて阪大でした。失礼しました。
「カレンの民族としての一体性」っていうところは過大評価しても過小評価してもいかん部分なんでしょうね。自分の知り合いにもカレンの人はいたけど、その人がそうだったように多くのカレン人は今や、ミャンマーの中の一員として生きることを選択しています。ミャンマー政府が問題山積みの政権であったとしても。
「~族」って言い方は確かにバイアスのかかった言い方なんで、僕はミャンマー関連で何か書くときには「カレン人」と書くようにしています。

言語的なことについて言えばカレン諸語はチベット・ビルマ語族の中にで最南端の分布なんですが、語順は多くのチベビが日本語と同じく主語+目的語+動詞なのに対して、カレン諸語はチベビでほとんど唯一、英語や中国語、タイ語と同じ主語+動詞+目的語の順番。これは彼らの基層言語がチベビとは異なる言語だったか、もしくは非チベット・ビルマ系のモン語やタイ語に囲まれていたため語順が変化したと考えられます。
それはさておき、彼らの言語とビルマ語は、日本語と中国語ほど違うことになり、これじゃあ「お前はビルマ人だ」と言われても困るよね、というお話で。

在日コリアンとカレン民族の共通点は言うまでもなくマイノリティーであることなんだけど、違う点は彼らが世界に認められる祖国を持たないことだと思うんですよね。祖国も統一された文字も言語も宗教もないけれど、それでもカレンの一体性を主張し、長年戦ってきた。
とはいえ、ミャンマーの中央政府を倒す力量があるわけでもなく、中央政府も反政府組織を殲滅する力を持たず、高峻な山脈に守られて拮抗状態のまま21世紀を迎えた。
もちろんミャンマー全体が東西陣営が角付き合わせる激戦地でもあり、マジョリティーのビルマ人政権は東側が、マイノリティーは西側が支援する構図もあったけれど、多くの反政府組織が麻薬の売買に関わっていることから、白眼視されてきたことも事実なんですよねぇ。我々東北アジアと東南アジアでは、このあたりの事情がかなり違うんだろうと思います。

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