劇団タルオルム「我が家のイヤギ」、どしゃ降りの雨の中、心ふるえる演劇体験
コリアン「統一マダン」辺りの続き→
大雨のため、一眼レフを持参しなかった。悔やんでも悔やみきれない。僕は劇中、本当にスゴイものを観たんだ。写真に撮らないと覚えていられないのにどうしよう? 僕は忘れてしまうのだろうか?
子ども中心の生活になり演劇小屋やテントに入れなくなって久しい。息子@小学2年生の民族学級ソベッカソンセンニムも出演していると聞きつけ、「マダン劇なら親子で観れる!」 と当日を楽しみにしていた。それまで、タルオルムは、気になってはいたが縁遠い存在だった。
朝から降ったり止んだりな雨。僕と息子が会場の「中大阪朝鮮初級学校運動場」へ向かった土曜のマダンは激しい天気の中に在った。雨天のため大事をとり、妻と次男+ゼロ歳の長女は家で留守番。一緒に行く約束をしていた息子のイトコ2人には「連れていけない」と謝った。2人ともすごく楽しみにしていた。ごめんね。しかし、僕は会場へは雨天であろうと駆けつけると決めていたので、朝から息子の雨カッパ上下を新調し、観劇中に広げる必要がありそうな透明傘の具合も再チェック。僕も上下の雨合羽に工事現場用の雨長靴を装備。タッペギも忘れずにこっそり用意した。
既に日も落ち暗がりの中、初めて中大阪の朝鮮初級学校校庭に自転車で乗り入れる。仮設照明が雰囲気を出してる。受付テントの他、保護者会協力の屋台テントも見える。校庭に芝生が見える。へぇそうなのか。既にそこらの水たまりはえらいことになっている。水はけがどうのという状態ではない。しかし、てっきり地べたに座り込んでの観劇スタイルと思っていたが、マダン会場にはスチール椅子のセッティング。ありがたい。なーに、「水かぶり演劇」はよくある仕掛け。最初から最後までずぶ濡れ芝居は余り無いが。観劇中に息子が用足しになるのを想定し便所の場所を確認しておく。校舎内の便所を借りる。息子とウリハッキョの校舎に入る。施設のことをよく知ってそうな女性に声をかける。便所がどこかご存知ですか? あっちだよ! 息子と同い年ぐらいの女の子は日頃この校舎で勉学に励む現役児童とのこと。1階の便所は水回りに不備があるらしく、2階の便所へ。階段より上部は「土足禁止」ということ。そばに居た方から「どうぞ!」とスリッパを頂く。息子がハングルのポスターを見つけ、そのうち周りがハングルだらけであることに気づく。
「あれ?ここって韓国に近いの?いつの間にか韓国にきてたん?」と聞いてくる。「ここはまだ大阪やで。僕が40年かかって朝鮮学校に入るところを、あなたは7年で入ったんだね、すごいね」などと返事する。階段横の廊下に視線をやると、教室のスリガラスが目に入る。建物の内部仕上やその設備はどこも年季が入っており、感慨深い。
マダン劇は、観客が取り囲むその中央に舞台が出現する。観客と役者との精神的距離もかなり近い。雨が降ったり止んだり~カッパのフードを被ったり~傘を閉じたりと、落ち着かない雰囲気もあったが、見渡すといつの間にか客席後方にはマダンを囲む立ち見客が大勢。みなが皆、視界の悪い状態で前を見つめている。見つめる先の中央のマダンはライトアップで白くぼわっと光っている。前に座る兄ちゃんが広げる不透明な傘は、申し訳ないが僕の透明傘に交換してもらった。兄ちゃんのデニムは濡れてて居心地悪そうやった。僕は、いつでも(誘われれば)劇中へ飛び出すぐらいのテンションにあげつつ観劇体勢。そこへ、足を引きずりリアカーを引くおっさんが話しかけてきた、、(以下ネタバレ含む)
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劇団タルオルム第六回公演 マダン劇「我が家のイヤギ」開演
ある家族の話。家族の歴史。分断の歴史。朝鮮籍と韓国籍。チャンゴやケンガリが鳴り響く。役者はマダンの外中を走り回り、戦後を、4.3、60年70年代、2000年を、ドロをはね上げ、雨と歌い、祈り、願い、踊り駆け抜けていく。
こんなシーンがあった。
皆が喋りながら集まって来たかと思うと、いつの間にか座卓が並び、ヤカンに七輪、タッペギに焼肉、どんちゃん騒ぎになっている。
息子「えー!? お肉焼いてるで!」
僕「羨ましいな、混ぜてほしいわ。行こか?」
当然のようにマダン劇の観客にもヤカンのタッペギが廻ってくる。そういえば雨の降りも弱まっていた。客席でヤカンを隣へ隣へ回していくのは愉快。しかし、楽しい宴会はそう長くは続かない、、
こんなシーンがあった。
幼い頃に別れた兄妹。兄は韓国へ、妹は日本の地でウリハッキョのソンセンニムになることを夢見る。沢山の雨が降り続き、そして、霧雨となった頃合いにスポットライトでマダンが光る。ウリハッキョの先生として奔走する妹たち家族のもとへ、アボジの容態悪化の報せを受けた兄が駆けつける。兄妹の再会。家族の再会。朴正煕の軍事独裁政権を粉砕するのよ!! デモの先頭に立ってシュプレヒコールをあげるのよ!と勢い兄に話す妹。妹が振り上げ続けようとするコブシを兄は全身で押さえこみ大声で制止を促す。驚く妹。「なんてことをしてるんや! オレは朴正煕の宣伝マンや!」。一転、ザザーっと土砂降り。ドロ水が、熱気が湯気となり白く燃える。妹を抑えつける手を離した兄は、雨に叩きつけられるに構わず顔を上げ周囲に訴える。「朴正煕万歳! 朴正煕万歳!!」 全てを洗い流そうとする雨はしかし、白く燃える妹と兄とそして観客をただ力の限り打ち続けるだけザザザザザザザッ
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雨が止むようにと願うも叶わず、しかしドシャ降りの最中に垣間見てしまった奇跡の瞬間を思うと、雨を呪うことも出来ず。あぁ、公演を家で留守番の妻にも観せたかった。あぁ、カメラのシャッターを切りたかった。
休憩時間にはチヂミとタコキュウリも頂いた。学同のOPや、神戸長田の友人にも会った。息子の小学校の先生にも会った。暗がりでは友人の顔がよく判らなかった。暗がりで友人たちと出会うという経験が久しく無かった。懐かしい感じ。きっと傘や雨ガッパの向こうにもっと沢山の仲間が居たんだと想像。カーテンコールが終り、息子もソンセンニムに挨拶できた。「公演中リンゴを見つけたけど、顔を見たら笑ろうてしまうし見ぃひんようにしてたんやで」とソベッカ。さすがに息子、帰宅途中には完全にバタンQ。よく付き合った。ありがとう。
金民樹さん、スタッフ皆さん、雨の中の公演よく決断してくれました。感動したよ。大事な気持ちを思い出したよ。
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20年近く前に観劇した新宿梁山泊の「映像都市(チネチッタ)」を思い出す。光に包まれる真っ白な金久美子が真っ直ぐ前を見ながらも徘徊するシーンが目に焼き付いて忘れられない。今回果たして、豪雨の中で光と熱気が立ち上る「パクチョンヒ!」と叫ぶ姿を、僕は忘れてしまうのだろうか?
- 劇団タルオルム
http://www.office-wink.com/tal-orum/jp/index.php - 河津聖恵 詩空間
「劇団タルオルム第六回公演、マダン劇「我が家のイヤギ」」
http://reliance.blog.eonet.jp/default/2011/06/post-89ae.html
- aohyon
劇団タルオルム『我が家の이야기-イヤギ-』6.17金18土、19時半開演、中大阪朝鮮初級学校運動場 http://t.co/es2DYNf /劇団タルオルム http://bit.ly/iMsMN8 - minsu615
劇団タルオルム本公演 マダン劇「我が家のイヤギ」 6/17(金)-18(土) 19時30分の2ステージのみ!地下鉄緑橋駅徒歩8分の中大阪朝鮮初級学校運動場にて! http://bit.ly/i7GNEK #engeki #shibai - pakchigi45
家も私が留守番~ウリオンマは、チヂミ販売しでいます。と思う RT @aohyon: はじめて中大阪朝鮮初級学校なう 雨は降ってるなあ。カッパで観劇。家族みんなで来たかったが、赤ちゃん留守番で、リンゴと来たよ...
→コリアン話「アゲハのチョゴリ(3ヶ月)」へ続く→
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/青ひょん